人は、自分と似た部分を持つ人に惹かれるという。惹かれるといっても、実際はウマが合うとかその程度の解釈で良いと思うけど。
これは僕自身に置き換えても、その通りだと感じる。
僕と親しくしてくれる友人は、大半がルックス関係なく僕に似た人見知りである。
僕ほど拗らせた人はいないけど、類は友を呼ぶを如実に表した状態だと言える。
何人か僕と真逆の性格の友達もいるけど、彼らとは表面的なところではなく、内面的なところが似ていると僕は思っている。
例えば、価値観とか、趣味とか、そんなところである。
こういう似たものに惹かれる的法則は、どうやら男女間でも当てはまるらしい。
実際に好きな異性アンケートってのを見たことがあるが、1位は顔・・・ではなく価値観が同じという要素が来ていた。
ちなみに顔は2位とか3位で、金と競っていた。
さて、確かに自分の人生を振り返ってみても、カップルというものはどっか似た者同士の場合が多かった。
活発な性格の女子は、同じく明るい男を選ぶ。
冷静な性格の女子は、同じくクールで頭の良い男を選ぶ。
享楽的な性格の女子は、同じく今を時めく、例えば不良に走ったような男を選ぶ。
などなど。勿論例外もあるけど、結構該当者は多い。
・・・ここでふと思うところがある。この法則に則れば、人見知りは人見知り同士で惹かれるはずではなかろうか。
そしてこれは、実際にあるのかもしれない。
僕は中学を出て以降、大学に入るまでは、女性から話しかけられた回数は多分15も行かないし、会話時間は圧縮すれば10分とかそんなではないかと思う。
実はその貴重な15回の内、4~5回は人見知りな女子から話しかけられたものだと、今考えれば思う。
単純計算で、僕は年に5回しか話しかけられていないことになる。
ということは、ほぼ1年分は人見知り女子からのそれだと考えると、なんかもう目が眩みそうな頻度である。
そしてその女子との会話を除けば、ほとんどが「ここの問題わかる?」とか「オススメの参考書何?」というプライベート0なことばかりの会話?だったが・・
人見知り女子は割とプライベートなことを聞いてくることが多かった。
流石に5回全てを思い出すのはちょっと難しいが、貴重な人見知り女子との交流を振り返りつつ、謎に満ちた彼女たちの片鱗を探ることにする。
導入がすっかり長くなったが、今回のテーマはタイトルの通りである。
ファーストコンタクト。
最初に僕が人見知りの女子から話しかけられたのは、高校2年生のときだった。
何の授業か忘れたが、男女混合の班を作って、適当な問題を協力して解く場だったのは覚えている。
男女でキャッキャしながらなんかするのが非常に苦手だった僕は、その班にたまたまいた秀才の男を中心に、ほぼ2人でさっさと解決に持っていった。
協調性のないクズ(僕)のせいで、僕の班は早々に暇を持て余していた。
当然暇なので、適当に横に居た友達と、「最近鉄拳6しにいってる?」みたいな感じで話し始めた。鉄拳6とは、当時流行っていた格闘ゲームである。
友達と2人で盛り上がっていると、突然その会話に加わる声があった。
「最近の台ってレバーの感じどう?」
・・・エラいコアなこと訊いてくるなぁ。誰だ?
振り向いてみると、そこにはいつも一人でいるイメージだった女子が居た。
極端なイメージだが、わたモテのもこっちっぽい。
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「まさかの女子!」と「テーマがマニアックすぎるだろ!」と2重の意味で驚いたが・・・
とりあえず、
「今までのより感度がだいぶ良くて、思い通りに動かしやすくなったけど、コマンドミスも増えたねー」
みたいに、引かれるの承知でマニアック返しをした。
すると、だ。
ぱあっという音が聞こえるくらい、その女子がにこっと笑い、顔に光が灯ったのがわかった。なんというか、孤独な旅の中に同志を見つけたかのような。
こんなに輝いているその人を見るのは初めてだった。そして僕は思った。
「ははん、この人は俺と同類な人見知りだな」と。
そしてその日1日、僕はその人と、「グラップラー刃牙」とか「うしおととら」とか、何かすごく漢色濃いマンガについて語り合ったのを覚えている。
傍目にはカップルに見えていたかもしれないが、過去の話だからどうでもいいな。
セカンドコンタクト。
その数か月後。僕は北海道、すすきのに居た。修学旅行というヤツだ。
3泊4日を恙なく終え、僕は帰りの飛行機の席に着いていた。席は機体右側の窓のある方。通路側の席には誰も居ない。
そして僕の居た列は、その2席のみ。
正直言って、めっちゃくちゃ眠かった。何人かの男女がキャッキャしてるのが聞こえたが、なんか楽しそうだなぁ。と冷めた目で見ていた。
そしていよいよ寝る・・・というときに、その声は聞こえた。
「あの・・・」
?空耳か?
「あの・・・」
?ハッキリ聞こえた。
簡易な机に突っ伏していた顔を上げ、声のする左の方を振り返ってみると、隣の席にいつぞやのもこっちさんが居た。
そして手に何かを持っている。なんか透明で四角い箱の中に、濃い小豆色の細長いものがたくさん入っている。
「あの、イカ、要りませんか?」
あ、これ、イカだったのね・・。よく見たらスルメのようだった。差し出されたものを断るのは悪いので、「あざっす」と言って僕はイカを頂いた。
それをみて少し微笑んでから、もこっちさんもイカを噛み始めた。貰ったイカをくちゃくちゃ噛みながら、色々なことを考える僕。
話しかけ方、僕と同じだなぁ。人見知りの女子って、こんな男らしくない男にも緊張するもんなのか?とか。
飛行機の席、隣だったんだ。とか。
なんでお土産がイカなんだろう。とか。
夕日が差し込む機内。窓側だったので、とても眩しかったことを覚えている。
そんな中で、隣同士の席で、2人並んだ男女が、くちゃくちゃとイカを噛む。
「きっとこれ、誰か見てたら噂になるよな」と思っていたが、周りの人は全員寝ていたのでそれは杞憂だった。
色々な思いや憂いと、イカ臭い空気。
それら諸々を乗せて、飛行機は広島を目指し、千歳空港を発つのであった。
サードコンタクト。
そんな修学旅行から時は流れ。
僕は再び男女混合の班で何かするっていう授業を受けていた。
家庭科だったような気がするが、僕の班には家事得意な女子が固まっていた為、男共は野菜の調理と皿洗いだけしてれば終わりという非常に楽な回だった。
そうして出来上がった味噌汁と煮魚を、「たいへん美味しゅうございました。」と完食し、再び皿洗いをしていた僕。
何か周りではギャルが彼氏のチ○コについて語り合っていたが、そんなのに心を乱していては綺麗に皿など洗えないのだよ。
ということで無心に皿を洗っていると・・・。
「中元さん・・・」
ん?
「中元さん・・・」
気のせいじゃない。聞こえる。
声の方を振り返ると、またまたもこっちさんが居た。
何故に僕のこと、さん付け?まあいいや。
「ん?どうしたの?」と僕にできる精一杯の爽やかさで返す。
「ずっと思っていたのですが・・・中元さんって、ニコ厨ですか?」
ニコ厨とは、簡単に言えばニコニコ動画という動画投稿サイトに入り浸る人のことだと思っていただければいい。
細かく説明するのは面倒だが、あまりいい心象の言葉ではない。
面と向かって、「ずっとそうだと思っていましたが、あなたは新しめのオタクですか?」って聞かれたかに等しい。
とはいっても、怒って見せれば器が小さい男の出来上がりだし。
無血開城で受け入れればそういうイメージが付きまとうし。どう返すか困ったもんだが・・・。
「たまには観るけど、中毒じゃないよ」
と、さらっと受け流しておいた。
そして何故かであるが、この後の記憶が綺麗さっぱり抜け落ちている。
記憶が無くなるほどの衝撃的な何かがあったのか、それとも会話が終わったかは定かではないが、どうにも思い出せない。
てかもこっちさん出現率高いな。
あと2回は別人だったけど、どうにも長くなるので今回はここまで。
人見知り女子とは。
あまり偉そうなこと言いたくはないが、人見知りである以上男も女もあんまり中身変わらないな、というのが僕の思うところである。
唯一違うとすれば、人見知りの男は「男らしくない」と女性から不評気味であるのに対し、人見知りの女子は「奥ゆかしい」と男性から人気気味っていうくらいか。
尚、僕の持論だが、人見知り女子ばっか狙う男は、恋愛経験が少ないと思う。
経験が少ないぶん実情が分からないから、とりあえずこっちがリードしやすいところを求めるからだと僕は思っている。
これは、今までに数多の同じ気質の野郎共と、理想の女性像を語り合うという不毛なことをしてるうちに気付いたことだけど。
ということで、人見知りな女子(或は男)がもしアナタに話しかけてきたときは、気持ちが分かる以上、持てる最大限の優しさで接してあげた方が良い。
話しかける前に使う勇気の量、そして拒絶されたときのあの怖さ、アナタならわかるでしょう?
もっとも、人見知り拗らせた男は、優しさにすぐ魅了されてしまいがちなので、そこは気を付けた方が良いかもしれない。
「あの人に優しくしてもらった・・・。俺あの人好きかもしれん」とガチ気味に聞いたことは何回もある。
人見知りは、男女違えど人見知り。
数少ない交流を通じて僕が得た、ちょっと救いになった教訓であった。