喋りが苦手だ。就職活動とか、英検の二次とかは切り抜けてきたが、それはたっぷりと予習をする時間があったためなのが大きい。
瞬発的な返し。筋道を立てながら簡潔に話し、きちんとオチをつけるエピソードトーク。
いつかできたらなと夢想こそすれ、現実の僕はその技量に程遠いというのが冷厳な事実である。
これと同じ悩みを持つ方も多いのではなかろうか。べしゃりが苦手なままだと、自分は一生コミュ障なのだと。
―実は嬉しいことに、その前提はダウトだという。
人は誰かの面白い話を聞くよりも、持って産まれた性質として、『誰かに話を聞いてもらう』欲求の方が強いのだそうだ。
そして、一般的に言われる『コミュ力が高い』というのと、『べしゃりが上手』というのは別モノだ。
実際のところ、『上手に話しを聞く方法』さえ身に付けておけば、やり取りとしての『コミュ力』は高いと評されるという。
これは光が差した。雄弁じゃなくてもそう思われる術があるなんて。
ということで今日は、僕が実践し、そして実際に効果があった(と僕が感じた)ものについて、つらつらとまとめていこうと思う。
相槌。
最も簡単なものにして、効果の高さは最たるものだ。『僕(私)、話を聞いてますよ』というサインを定期的に相手へ出すのはもはや必須だ。
といっても、難しい話ではない。とりあえず、感情をややオーバーに込めて、『へぇー!』とか『マジすか!』というだけで構わない。
きちんと相槌を打つと、相手のトークが加速するのを、僕は何度も体感している。
例えば、携帯を弄りながら『へー』という生返事をされると、びっくりするほど面白くない。
でも、その逆をされると、びっくりするほど気分が良い。シンプルだが、奥が深い論理だ。
ちなみに、心理学的には以下の相槌も効果が高いのだという。
バックトラッキング
相手が言った言葉を復唱するのがそれ。例を挙げる。
A「最近、ワインにハマってるんだよね」
B「へー、ワインですか」
以上。つまるところ、オウム返しである。
発言を丸ごと繰り返されるとこの上なくウザいものだが、一部分であればその反対という。
確かに、これを意識して実践すると、相手の反応は良い。ただ、あまりに露骨にやると考え物なので、たまに織り交ぜる程度に取り入れてみよう。
投げ返し。
話が途切れたときにどうするか。例えばその度にこちらが一方的に質問を投げ続けると、それはもはや面接に近い。
尋問調にせず、かつ会話を再び繋げるにはどうするか。勿論、全く別のテーマに持ち込むのもアリなのだが、途切れる度に主題が変わるとせわしない。
ということで、『テーマに関連する事柄で自分の意見を述べつつ、再び投げ返す』という手がある。
言葉にすると難しいが、例を挙げる。
A「最近読んだ小説が面白かったんよー」
B「小説ですかー」
A「そー」
B「小説なら、俺も最近○○というのを読んだんだけど、聞いたことある?」
みたいな。実際はシチュエーションが無尽蔵にあるため、いくらでも形を変えて、どうとでも応用できる。
勿論、得意なジャンルの話であれば、こちらが話す番に回るのも良い。それは場合によりけりで、押引きしてほしい。
共通項探し。
如何に早く共通する何かを見つけるか。結構これ、大切なファクターである。
地元の友達とか、気心知れた幼馴染との話が楽しいのは、共通点だらけだとお互い承知済みなのも、無関係ではないだろう。
テンポよく質問してみたり、別の誰かを話題にしてみたりと、あまり面識のない相手であれば、まずは共通する話題を探すことから始めると良い。
以下、僕が考える話が弾みやすいそれらを列挙してみる。
強い要素
出身地、年齢、仕事、趣味、共通の友達
まぁまぁ強い要素
好きなドリンク、好きな料理、行ってみたいところ、最近ハマってる何か
場合によりけり
都市伝説、科学の最新の発見、珍生物、スポーツの結果といった各種トリビア
ニッチなところでガチリとハマればかなり強い繋がりとなるが・・・。最初からそこに突っ込むのはオススメしない。
大抵変な人とか、絡みにくいアクの強いヤツと思われてお終いだろう。
『合うヤツとしかつるまない!』という豪胆さがあれば別に構わないだろうけど、無難に関係を作りたい人は、まずは強い要素から探してみてほしい。
ちなみに僕は、大抵の話題にはついていけるが、ドラマとか歌番組の一切を観ないため、そちらに関しては非常に弱い。
別にそれを補うために勉強しようとは微塵も思っていない。そういうのが好きな人は、僕ではない他のそういう人と遊べば良いと思っている。
こういう風に自分なりのラインを作っておくと、対人関係がある意味楽になる。ぜひ試してみてほしい。
やってはいけないこと。
一応、最後にやってはならないことを述べておく。言い換えれば、『簡単に嫌われるための方法論』である。
自分がやってしまっていないか、気を付けよう。
話を奪い取る。
話の途中で、『俺はさ~』という感じでひったくられると、神経を疑う。常に会話を自分のターンにするのは絶対にダメだ。
会話と会話の切れ目ならまだしも、論が展開されている最中にやると、簡単に嫌われる。気を付けよう。
携帯をイジる。
話している最中に携帯をイジられるとどう思うか。
気が短い人は、多分簡単に怒る。僕みたいな小心者は、自分の話がつまらないのかと気に病む。
つまり、誰も幸せにならないのだ。まぁ、イジっている本人は、つまらない話からエスケープできて幸せかもしれないが。
話に興味がないことを伝えたければ、他にも手はある。例えば、視線を外してさりげなく時計を見る、という動作も、ある種そういうメッセージになるという。
誰かとの間に軋轢を作りたくなければ、所作には気を付けよう。尚、僕は携帯を机の上に出すことも、基本は避けている。
オチを奪う。
最悪だ。論を展開し展開し、最後の最後になってから、『まさか、○○(オチ)とかじゃないですよね~(笑)』みたく話のコシをへし折る輩は、たまにいる。
上司にやったら色々と終わるし、そうじゃない人にやっても、色々と失う。
平常であれば大丈夫な人も、アルコールが入ると別なこともある。酔ったときこそ気を付けよう。
これは流石に弁護できない。相手を気分よくしたければ、むしろ上手にオチまで『誘導』した方が良い。
気になる人は、親しい人に自分の癖について聞いてみてもよい。尤も、それを受け入れる準備があれば、なのだが。
終わりに。
ということで、別に雄弁術みたいなよく分からない技術を学ばなくても、僕らがコミュ障のレッテルから免れる術は存在する。
無理に短所を伸ばす必要はない。仮に伸びても、せいぜい人並みになって終わりだ。
だからこそ、ある種逆転の発想と言うか、『聞き方』を学んでみるのは大いに参考となる。
関連書籍も大量に溢れているので、まずは文庫とか新書のような安いものから手に取ってみるのも良い。
ということで僕はこれから飲み会に繰り出す。酔ってても喋るのはしんどいので、上記の手を使って聞き役に回ってくる。
これもまた務め。人見知りでもネガティブでも喋りが苦手でも、それもまた考え方を変えれば一つの才能だ。
何事も要は使いようである。なんか深いオチになったので、今日はこの辺にする。
※より細かいシチュエーションはこちら。↓
hitomishiriteki-jinseikun.hatenablog.com