今でこそそこまでじゃなくなったが、僕はかつて『謙虚』に全てのパラメータを振っていたような男であり、下手に出ることには自信があった。(なんか矛盾)
偉人の伝記を読んでも、耐えがたきを耐え、下手に出続けて成り上がった人たちのエピソードばかりが心に残る。逆に、傲慢さが故に身を滅ぼす人間も然り。
僕はアリとキリギリスなら、アリを選ぶし、そのアリの中でも一番働いて我慢するアリになりたい。そんなクソ面倒なことを座右の銘として生きてきた。
―が。
最近何だかんだで色んな人と出会い、或いはやり取りする機会が増え、今までとは違うことを時たま感じるようになった。
『やたら謝られたり下手に出たりされると、これはこれで面倒だしイライラするなぁ・・』
そして『はっ!』とした。
これは僕がずっとずっとやってきたことじゃねぇか!!!
まさにどの面下げて、どの口が言うという状態である。
今日はそこで覚えた違和感を説明しながら、反省の弁をつらつらとたれてやろうと思う。
謝ることが至上の正義で誠意と思われる皆様は、ぜひ一度このテーマと向き合ってほしい。では行こう。
『謙虚』のダークサイド。
多分一度は受け取ったことのある、『謙虚さ』全開の文言を適当に用意してみる。
『お忙しい中誠に申し訳ありませんが、この資料を明後日までにご確認いただければと思います。もう少し早く送るべきだったのですが、私の手違いでご負担をお掛けする形になってしまい誠に申し訳ありません(以下100文字以上)』
・・・・・・・。
申し訳ないという気持ちはすごく伝わってくるのだが、ここまで過剰だと、僕には別のメッセージとして受け取られる。
『こんだけ下手に出てんだから、やってくれるよな?』
つまり、オブラートに何重にもくるんだ【業務命令】に等しいのだ。しかも大抵はmlか何かで、周りを巻き込んでこういうのは届く。周りの目という味方が付いている。
この場合、仮にごねたり無視したりすれば、株を落とすのは僕だ。王手飛車取り。もはや詰みに等しい。選択肢はあるようで無い。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
(めんどくさっ)
言葉には出さないが、僕はそう思ってしまった。まさにブーメラン。なるほど、『謙虚』って手放しに素晴らしいと思ってたけど、こういう側面もあるんですね。
―最近、ワークライフバランスや働き方改革で、黒い業務をしている方への同情は社会的に強まっている。(休日出勤や残業と聞くと、憐みを覚えるならそういうこと)
だがダークな考え方をすれば、そういう黒い仕事をすることで、ある意味強い立場を手に入れられるという解釈もできる。
不思議な背徳感がもたらす同調圧力は、殊の外強い。例えば自分が休んでいる間、あの人は働いてると言われれば、謎の後ろめたさを覚えたりしないだろうか?
その状態の人からさらに頭を下げられれば、動かないこっちがクソ野郎と扱われる。めんどくさいが、世論とはそんなもんな気がする。
―ではこういうのにハッキリとイラついてしまった手前、僕は今後どういう身の振り方をすればいいのか?『謙虚2.0』なんてのはあるのだろうか?
次はそういう『前向き(?)』なテーマに、思いを馳せてみよう。
謙虚2.0を目指して。
さて。
ここからは闇雲に『謙虚さ』を使った結果で墓穴を掘るのを防ぐため、その健全な使い方を考察してみよう。
まず『謙虚全振り』のよろしくないところは、『謝罪や下手に出ること』で『他者の労力や時間』を買っているような構図になっているところだ。
しかしヘンな話だが、『労力や時間』では『他者の謝罪や下手に出ること』は別に手に入らない。(あと要らない。働いてやるから謝れと言われても困る)
つまり、『労力や時間』を提供した側からすれば、何となく損をしたような気になってしまうのだ。(大体『感謝』が頂けるが、それ以上でもそれ以下でもない)
「そんな小さいことを言うなよ小物wwww」とか言われそうだが、僕は僕の労力や時間を結構大切に考えているので、金ドブなことは出来るだけ避けたい。
さて。
僕が今後、『謙虚』をウリに何かする際は、必ず『相手が困っていることの解決』を対価として考える所存である。(ただしできる範囲で)
事務作業が滞っているなら、それを手伝う。休みが不足しているなら、代打としてその時間を作る。
あくまで『謙虚さ』とは、依頼を通すためのタッチトークであり、交渉はそこから始まるのだ。そして交渉とは、双方が得をするところに落としどころが無いと無意味。
貸しと借りは常に0。これは『謙虚全振り』気質なら、しかと胸に刻んでおくべきだと思う。
―また、ここいらで一度きちんと勉強したいのが、『敬語』である。
今の小中学生を見ていて感じるのだが、『敬語』と『謝罪』を履き違えている子が滅茶苦茶多い。(これはあらゆるメディアで常に誰かが謝っているせいだと思う)
つまり、本人は『丁寧にお願い』したつもりが、文面を受け取った側には『謎の謝罪祭り』に捉えられている可能性があるのだ。
『敬語』と『謝罪』は、全く持って別物である。当然なのだが、意外と当然でなかったりする。
ということで、さっき『謙虚全振り』の例として書いた文章を、もう一度引っ張ってこよう。
『お忙しい中誠に申し訳ありませんが、この資料を明後日までにご確認いただければと思います。もう少し早く送るべきだったのですが、私の手違いでご負担をお掛けする形になってしまい誠に申し訳ありません(以下100文字以上)』
―この中で、謝っている箇所を強調すると、こうなる。
『お忙しい中誠に申し訳ありませんが、この資料を明後日までにご確認いただければと思います。もう少し早く送るべきだったのですが、私の手違いでご負担をお掛けする形になってしまい誠に申し訳ありません(以下100文字以上)』
この『申し訳ありません』が強すぎると僕は感じる。ちなみに『申し訳ない』とは、『言い訳しようがないくらいこっちに非がある』という説もある。やはり強い。
さて。それを踏まえ、なるべく意味を変えず少しマイルドにすると、こんな具合だろうか。
『ご多忙な折恐縮ですが、この資料を明後日までにご確認いただければと思います。今後は、より早い段階で送付できるよう、スケジューリングを徹底します。失礼しました。』
―下手に謝る一辺倒ではなく、今後の対応策を書く。だらだらした弁明は一挙割愛。僕が受け取るなら、こっちの方が確かに良い。
(ちなみに、僕が入社して最初に怒られたときの内容は、『謝ってばっかじゃなくて事後策を書け!』というものだった。納得。)
ということでまとめると、『謙虚2.0』を目指すのなら、
① 『謝罪や下手に出ること』だけで、『相手の時間や労働力』を貰おうとしない!
② 『敬語』と『謝罪』は別物だと、しっかり認識する!
という2点はマストだろう。いやー、もっと早く知りたかったが、30歳になる前に知られて良かったともいえる、そんなテーマである。
終わりに。
とはいえ、いきなり『謙虚』という武器を捨てるのも、人見知りやネガティブには怖い話だよなぁー。
―と思った方は、後でこの記事を読み返してみてほしい。
なぜなら僕は一言も、『謙虚を捨てろ』なんて言ってないからだ。
『謙虚の使い方を変える』というのが大意である。
そうした強かな面を持つことで、もしかしたら夢の世界、『人見知り2.0』や『ネガティブ2.0』も見えてくる…かもしれない。
そんな場所、あるのかな。きっとあるよね。そう信じます。
深夜テンションで最後がワヤになりましたが、足掛け3000字、お読みいただきありがとうございました。