キャンプ用品のカタログを読んでいると、ニコニコを通り越してニヤニヤしてきます。漢字で書けば『破顔イイィィ』ってところでしょうか。中元です。
さて。最近、実は自分がわかっていないことにまた気付いた。それは、【クレーム】と【リクエスト】の違いである。
恐らくこの2つは明確な違いがあるのだろうが、ではその線引きは何なのか、実はあんまり理解できていないのだ。
それに気付いたのは最近あった生徒とのやり取りで、「担当の先生に、もっと説明の量を増やしてほしいな~」とコメントされ、血の気が自分の中から引いたからである。
つまり、僕のメタはこれを【クレーム】と解釈したという次第だ。だが、少し考えると、これがなかなか腑に落ちない。
相当考えて、感情を頑張って差っ引いて、ようやく気付いた。「これは【リクエスト】じゃん!!」と。僕から引いた血の気を返してほしいくらいだぜ。
いかん。これらをごっちゃにしたままだと、マジで不健全だ。何かの要望が出てきた際、それを全て【クレーム】として受け止めるのは、メンタルを病んでしまいそうだ。
ここはコールセンターじゃない。クレームばかり飛んでくるわけが無い。【リクエスト】も混ざっているはずだ。
ならば、その差はどこにあるんだ?わからない以上、調べて調べて、突き止めてやろうじゃないか。
今日は、そんな奮闘の記録でございもす。
【クレーム】ってなに?
まずは具体例を読み漁るより、迂遠でも語源を辿っていく方が、多分正確な理解に行きつく。だからまずはやはり、辞書を引いてみよう。
1 商取引で、
条項に違約があった場合、違約した相手に対して 請求を行うこと。
2 苦情。異議。「クレームをつける」「クレームの処理をする」
やはりこの場合、後者の意味で理解されていると考える方が正解だろう。僕もそうである。クレームとは、やはりどうしても≒【苦情】なのだ。
(ちなみに類語には他に【文句】もある)
だが、そもそもの語源は英語だ。だから、英語の意味もきちんと掴んでおくと、何かがわかるかもしれない。だから、英英辞書を引いてみた。
するといくつかの意味がヒットしたが、その中でも関係性がありそうなものだけ紹介しておく。
to state that something is true, even though it has not been proved
(立証されてなくても、ある物事を”正しい”と主張すること)
なるへそ。これをネガティブに解釈すれば、上記の日本語的意味合いの【クレーム】というのに結びついてくる感じがする。
だが、元の英語には、【不利益を被った等の理由で、声高に提供主へ代償を迫ること】という風な高圧的な意味はなさそうである。
つまり、英語をこれ以上漁っても、あまり発見は無いと見て間違いなさげ。やはりオリジナルからは、ニュアンスが変わってしまっているようだ。
ならば、日本語で言う【クレーム】の類語として紹介された、【苦情】と【文句】の意味を調べればどうだろうか。早速引いてみよう。
文句→相手に対する言い分や苦情。不服。
苦情→他から害や不利益などをこうむっていることに対する不平・不満。また、それを表した言葉。
おや?少し差異がみえる。文句は、「相手に対する言い分や苦情」であり、苦情は「害や不利益をこうむっていることに対して不満を抱くこと」とある。
こう見ると、【文句】は【苦情+α】って意味合いに見える。そしてそのαとは、害や不利益をこうむっていない場合を指すらしい。
例えば、ある製品を使ったらすぐ壊れたのであれば苦情だが、虫の居所が悪くて相手に強い言葉で詰め寄ったとき、それは文句となる。
こうなると、日本語において【クレーム】と解釈される状況は、辞書的には【文句】が近いと考えてよさそうだ。
【クレーム】の中には、まっとうなご指摘ももちろんあるが、イチャモンだろうという例も中にはあり、苦情という定義だけではカバーできない部分があるためである。
ということで、【クレーム】についてまとめておくと、以下の通りである。
【クレーム】≒【文句】≒【苦情+α】
うむ、何か輪郭が見えてきた。では次、【リクエスト】の意味を調べていこう。
【リクエスト】ってなに?
ってことで次は、【リクエスト】について掘り下げてみよう。やっぱこちらも、まずは辞書の意味を並べることからだ。国語辞典と英英辞典から、それぞれ引用する。
[名](スル)要求。要望。特に、ラジオ・テレビなどの番組で、聴視者が特定の曲の放送を要求すること。また、その要求。
a polite or formal demand for something
(何かに対する、丁寧か形式的な要求。 ※補助金の申請など)
うーむ。【クレーム】は言葉が強いことで、【リクエスト】は丁寧に依頼することかと思っていたのだが、やはりちょっと違うらしい。
そしてさらに【リクエスト】の意味を掴むためには、「要求」や「要望」といった言葉の意味を調べた方がよさそうだ。
だからまた調べてみた。
要求→必要または当然なこととして相手に強く求めること。
要望→物事の実現を強く求めること。
・・・おや?これらって【クレーム】の定義にかぶってない?
つまり、何か実現してほしいこと(=実現されて当然なこと)があって、それを相手に求めれば、それはすなわち【リクエスト】となるそうだ。
だが、相手に何かを求めて怒ったような電話を掛けてくる人は、【クレーム】を入れたこととして解釈されるが、でもこれって【リクエスト】だよね、と。
どういう関係性があるんだろう?少し頭を抱えてしまった。
だが、すぐに閃いた。「あ、そういうことか?」という風に。以下、いよいよまとめです。
【リクエスト】ならば【クレーム】は真だが、【クレーム】ならば【リクエスト】は偽。
僕が閃いたのは、高校数学で習う「集合と論証」の考え方である。
無理矢理言葉にすれば、以下の関係性があるじゃないかなと、僕は思うわけで。
【クレーム】=【リクエスト】+”難癖”
これを説明するために、少し話が反れるが、難癖とその類義語の意味を整理しておこう。まずは「難癖」から。
非難すべき点。悪いところ。
続いて、類義語である「言い掛かり」の意味を載せる。
口実を作って、難癖をつけること
そしてこの「言い掛かり」の意味に、さっきの「難癖」の定義を代入すると、こうなる。
口実を作って、非難すべき点や悪いところを指摘すること
・・・いかがだろうか。こうなれば、相手は要求が目的ではなく、いいから怒りたいとか、不満を爆発させたいとか、そういう自分勝手なことが狙いなのだとわかる。
こうなれば【リクエスト】の定義から思い切り外れるのだが、【クレーム】の意味するところにはまだ入るだろう。
だからこそ、さっき挙げた公式もどきが導出されるというワケだ。
【クレーム】=【リクエスト】+”難癖”
つまり、タイトルから少し外れちゃうのだが、僕が身に着けるべき考え方は正確には、言われたことが【リクエスト】なのか【難癖】なのかを見抜くことである。
なーんだ。結構すっきりしてきたな。ってことで、もう少し論を続けてみよう。
【リクエスト】と【難癖】の違いを見抜くトレーニング。
さて。これらの二つは、実は目的とすることが同じなので、そこに違いを見出すことはできない。
それは、「発言主が何かしらの得をすること」である。【リクエスト】も【難癖】も、通れば言った人は何かしらのメリットを得るわけで。
そしてそのために、「行動を起こさねばならないのは言われた側」というのも共通している。だから、ここにも違いを求めるのは難しいだろう。
であれば、これら2つの違いは、「根拠」にあるとみていいだろう。つまり、その要求の根拠が真っ当であれば前者で、支離滅裂なら後者なのである。
そこで、以下の例を考えてみよう。どちらが【リクエスト】で、どちらが【難癖】か、少し考えてみてほしい。
①ご購入させて頂いたお弁当ですが、恐縮ですが私の好みからは遠かったです。
そこで、返金をお願いできないでしょうか。
②お宅で買った弁当、開けてみたら違う商品だったわよ!
今すぐ私が頼んだやつと交換して頂戴!
まず、①から検証する。言わんとすることは、「返金しろ」であり、その理由は、「弁当が口に合わないから」である。
これがもしまかり通るなら、「それを理由にタダ飯を食い放題できる」ことになってしまうので、辻褄がまるであっていない。日本は法治国家である。
つまり、これは余裕で【難癖】だ。
一方後者は、言葉こそやや強いが、弁当を間違えたのは、こちらに非があるのは明らかだ。だから、交換する理由として、むしろ客が権利を主張するべき場面である。
こちらは【リクエスト】と言って差し支えないだろう。
・・・得てして【難癖】は、それを通すと犯罪行為がまかり通ったり、理由となる事柄を引き起こしたのが申し立てた本人であったりと、粗だらけなことが多い。
そしてそこを追及すると、大体逆上されて面倒・・というのまで行くと、妄想になるからやめておこう。
終わりに。
てなわけで、今回調べてわかったことをざっくりまとめよう。
【クレーム】=【リクエスト】+”難癖”
つまり、
【リクエスト】ならば【クレーム】は真だが、【クレーム】ならば【リクエスト】は偽。
ということ。だから、
正確には申し立てが【リクエスト】なのか【難癖】なのか、きちんと見抜けるようになりましょう、
という話ということだった。
なんというか、結論が想像と違ってちょっと面白い。皆さんはどう思われただろうか。
では今日はこの辺で。